読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

あずまきよひこ「よつばと!」

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 いまごろハマってやんの。遅いっての。でも、ぼくはよつばと出会ってホントうれしく思ってます。この5歳の小さい女の子をめぐる数々のエピソードは、やさしさと驚きと出会いと発見に溢れ、すっかりおじさんになってしまったぼくの心をこれ以上ないほど癒してくれます。


 しかし、一気に七巻まで読んでぼくはよつばの生い立ちをまったく知らないってことに、かすかな不安も感じてしまうのです。日本人じゃない外見、拾った子?お母さんは?ぼくは、彼女のパーソナル・データを知る日を恐れてもいます。その日が涙に終始しないことを祈っています。


 ま、それは杞憂にすぎないと信じてぼくはこれからもよつばと付き合っていきます。彼女の成長を見守りたいと思います。子どもゆえに真っすぐで、物事を真正面からとらえるところが好きです。何でも挑戦しようとするバイタリティが素敵です。知らないうちに難しい言葉や、言い回しを憶えちゃってるとこなんかホントお茶目です。彼女の言動は、幾分ハラハラも混じってますが概ね元気の素です。ぼくは、よつばから大きな元気をもらっています。そして彼女のまわりにいる人たち。彼らがいるからこそ、このお話は成立するのです。よつばのイノセントで無邪気な言動に振り回されない人たちが脇を固めているからこそ、いつもホノボノと微笑ましい毎日となるのです。


 さて、こうしてよつばを巡るお話はこれからも続いていくわけなのですが、ぼくはこの素敵な時間が永遠に続かないことにわざと気づかないようにしています。第五巻の表紙をめくった本自体の絵。なんでもない絵ですが、ぼくはここに象徴をくみとってしまいます。表紙絵では、電車の開いた扉の真ん中でホームに立つよつばの絵が描かれています。日差しを浴び、膨らませた浮き輪を腰にはめ、満面の笑みで立つよつば。でも、中の絵ではそのよつばだけが描かれていません。裏を見れば浮き輪を腰にはめたよつばが走っていく姿が描かれているので、よつばの不在を恐れることはないのです。でも、ぼくは少しの不安を感じてしまいます。いやいや、杞憂です。ぼくが考えすぎてるだけなんです。よつばはいつまでも楽しく輝いている毎日を過ごしていくんです。

 よつば!世界がキミをまっているんだよ!