これ、いいっすよ。おすすめっすよ。まったくノーマークの作者だけど、なんか本屋で見かけたときビビット感があったんだよね。で、とにかく買って読んでみたってわけ。
本書にはニ十三の短編(掌編?うち一編は戯曲)が収録されている。さまざまなシチュエーションの中で描かれるのは、女同士の物語。女同士?男のぼくが、こんなおっさんがそんな話読んで面白いの?いやあ、これがめっぽう面白かった。なにがいいって、次々と展開するストーリーの次はどんな話なんだろう?っていうドキドキわくわく感と、実際それを読んでいる間の『こうきたか!』っていう満足感が素晴らしいのだ。女同士の話ばかりなのに、ここに収録されている物語たちにふんわりした甘さや、優しさはない。あらゆるジャンルを網羅するかのように繰り出されるお話たちは強固な生々しさと厳しさ、そして鼻薬としての滑稽さをまとい疾走する。
そう、『女同士』を芯に据え、時には友情を描き、時には恋愛を描き、また時にはSFの意匠をまとい、時にはファンタジーが顔を出し、そして時にはホラーでビビらせながらも、そこに本来表出しないような本音や、女同士がもたらす可能性がドカンと読み手に伝わってくる。そりゃあ、女性が読めばまた違う感想もっちゃうのかもしれないけど、ぼくはそう感じた。なんか新鮮でウキウキしてしまうのはどうしてだろう?こういうのってあるようでなかったんじゃない?
じゃあ、いったい例えばどんな話があるの?って思うでしょ?ちょっと紹介してよって。でも、内容は読んで確かめて欲しいんだな。でも、雰囲気ってのを感じてもらうために、タイトルをピックアップしてみようか。
「小桜妙子をどう呼べばいい」
「ばばあ日傘」
「姉妹たちの庭」
「だからその速度は」
「ときめきと私の肺を」
「ヤリマン名人伝」
「カナちゃんは足が無い」
「東京の二十三時にアンナは」
どう?こんな感じです。まあホント素敵にいろんな顔見せてくれちゃいます。女同士いいよね。美しいけど汚らわしくて、やさしいけど辛くて、温かいけどしょっぱくて、悲しいけど懐かしくて、男が持つ女性に対する勝手な幻想を快く打ち砕いてくれる。建前じゃなくて本音の女同士の物語ニ十三編、さあ、読め読め!