ジョン・ソールはひととき刊行が相次いだことがあって、調べてみたらいままでで二十三冊も刊行されているらしい。本書は彼の処女作であり、救いのない話に定評のあるソール誕生の一冊なのである。
忌まわしい伝説、呪われた森、消えた子ども、心を閉ざした少女、死を呼びこむ洞窟、岬に建つ家、憑依する霊とまさにゴシック小説を彩る要素がテンコ盛りなのである。
で、本書の感想なのだが、もちろん以下の文章は個人的なもので、ぼくが感じたままの事をそのまま書いてゆく。こういう風に前置きするのは如何せん以下の文章がことごとく否定的なものにならざるを得ないからだ。
ゴシック要素満載の本書は、しかし読んでみればこれがなんとも退屈な一冊だった。まず第一に見せ場がないし、それがゆえに話が助長でまどろっこしい。ミステリ的な興趣で盛り上げてくれればまだしも、そっちについてもお粗末な展開でまったく箸にも棒にもかからない。
本書で描かれる忌まわしい出来事は、日本という土壌ではあまりリアルに感じられない類のもので、信憑性がないというか、絵空事のような白々しさが際立って置いてけぼり感満載。まして、それが開巻早々に描かれるので、ショッキングな幕開けを狙った演出に鼻白んでしまう。ノッケからそんな感じなので、まずそこで分が悪い。
途中、かなり凄惨な場面があるが、それとて因縁の上に成り立っているかのように見せかけているだけの薄っぺらな様式なので、いってみればB級のホラー映画のとってつけたようなスプラッター・シーンをみてるようでなんとも味気ない。熱心な演技されて、俳優さんも大変ですねといったような第三者的な冷めた目でみてしまう自分が情けなくなってくる始末。
ソールは一冊も読んでいなかったにも関わらず、なぜか本は数冊買っていて、まだ「殉教者聖ペテロの会」、「踊る女」、「運命の町」、「因果の火」が積読本に紛れ込んでいたはずだ。
さて、それを読むかどうか。いや、おそらく読むまい。