読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ヴェンデッタ

 こんな夢をみた。

 実家の母から電話。

 「今日、あんた宛に電話があってんけどな」

 「ほう、誰から?」

 「ヴェンデッタってとこ」

 「は?なんて?」

 「ヴェンデッタ

 「何それ?」

 「わからん。ヴェンデッタっていうてた」

 「それは何屋さん?」

 「わからんねん」

 「なんや、それ」

 「いや、でもな以前にな、ウチにかかってきたカード会社とおんなじ感じやってん」

 「カード?」

 「うん・・・・・あんた、返済滞ってるとこあんの?」

 「いや、そんなんないで。思い当たらんけど」

 「そうか、なんか声とか話の調子がそっくりやってんけど」

 「ふうん」

 「ま、ないんやったらええねんけどな」

 「うん、そんなんないわ。気にしんとこか」

 「そやな」

 「ほなな」

 「はいはい」


 ―――――――――そして、次の日。

 実家が燃えた。すべて燃え尽きた。家も家財も母も。

 ぼくはその知らせをヴェンデッタの者ですと名乗る男からの電話でうけとった。呆然としてよく聞いてなかったがヴェンデッタとは何かの組織らしかった。この数ヶ月にぼくがとったある行動がもとで、こういう結果をまねいたらしい。まったく身におぼえがなかった。しかし、抗弁する間もなく電話は切れた。

 ぼくの話を信じる人は誰もいなかった。家族も友人も第三者機関も。
 

 ぼくはテレビをみている。AKB48が歌っている。みんな笑顔で元気いっぱいだ。ぼくはみかんの皮をむいている。流しの方から腐った水の臭いが漂ってくる。爽快と不快のブレンドされた匂いは、ぼくの気持ちをリセットさせた。ぼくはビスケットを焼いて、シチューを作って夕食にした。

 シチューのルーはヴェンデッタという会社のものだった。その社名は、ぼくの記憶を刺激した。

 その名を見るぼくの目から涙がとめどなくこぼれた。