読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ジェームズ・ボーセニュー「キリストのクローン/真実」

イメージ 1

「本が好き!」の献本である。

 

前回「キリストのクローン/新生」の感想で、いったいこの先どうなってしまうんだろうと興奮気味に書いていたのだが、この作者、その期待に充分こたえてくれている。なんせ、今回の最大の見せ場はあの『ヨハネの黙示録』なのだ。聖書を精読してない一般人のぼくでさえよく知っているこの恐ろしく不気味なくだりが現実のものとなってしまうのである。第一から七までの天使がラッパを吹くごとに出現するこの世の地獄。ありえない未曾有の災害が人類を襲い、地球に住む人間の半数が命を失い、太平洋の生物がすべて死滅してしまう。とんでもない展開だ。このへんのスペクタクルな一連の出来事は、いってみれば映画でいうシークエンス的な扱いで描かれる。人類の歴史の上で、これほどの破壊をこうむったことはないといえるほどの凄まじい災厄の数々が切り取られた場面としてデータ重視の記述で語られるので、あまりにも巨大な被害がどんどん蓄積されるにも関わらず、驚きのみが先行して心情的にはさほどのダメージは受けない。というか、次々に起こる災厄に心の整理がつかないままどんどん話が進行していくので、ストレスを置き去りにしたまま物語を追い続けることになるのだ。
 
 そして、ヒー、ヒー言いながらやっとのことで災厄を乗り切ると、そこにさらにとんでもない事実が突きつけられるのである。このへんの展開は、はっきりいってある程度予測はついていたのだが、作者はそこに裏付けとしての確かな証拠を用意しているので、すべてがストンと腑に落ちる。というか納得させられてしまう。このへんの呼吸は素晴らしく、解説でも言及されているがまるでミステリの謎解きのパートのように既成事実が反証によって覆されていくさまは限りない知的興奮を呼び起こす。いや、でも、これってぼくが東洋人だからそう思うのかもしれない。キリスト教ユダヤ教そしてイスラム教を信じる人々にとって、ここで描かれる真実はそれほどに衝撃的なものなのだ。
 
 さて、この先このシリーズはいったいどんな展開をみせるのか?最初このシリーズを読みはじめたときこんなに惹きつけられることになるとは思わなかった。完結編である第三作目の刊行が楽しみで仕方がない。