「真夏のMAIJO祭!!」第二弾は本書なのである。本書には短編が三編収録されている。タイトルは以下のとおり。
「イキルキス」
「鼻クソご飯」
「パッキャラ魔道」
この三作を読んで、ちょっと前の舞城節みたいなものを満喫した。舞城くんはこうでなくっちゃ。
それぞれやっぱりなんとも非現実的な事柄があり、それのもっともたるものは「イキルキス」の中学のクラスの女の子六人が次々に死んでいってしまうというものなのだが、そういった悲惨な事件なり事故なり犯罪なりが起こり、それを介して主人公たちが成長と内省を繰り返していくというパターンはある意味王道だ。それぞれがセックスや暴力や不幸や災いに満ちていたとしても、それに立ち向かう青春の光や家族の愛や人を思いやる気持ちなんかが等価に描かれるので、読んでいてまことにあっぱれな気持ちになってくる。あの手この手で描かれる物語は、ある意味めちゃくちゃな文法で自由奔放きわまりないのだが、それが一定のリズムを刻むから、読み手としては暴走ともとれる仮想のドライブ感にのせられて、あれよあれよとページを繰ることになる。
それにしても、この人の感覚はなんだろね?うずたかく積まれた太陽の匂いのする藁の上にダイブして思いっきり息を吸い込んだら細かい藁クズが鼻孔に入ってしまって、フガフガフゴフゴして涙と鼻水がいっぱい出て盛大にくしゃみなんかしたりして一人で苦しんでいたら、きれいなおねえさんがそこにやってきて「だいじょうぶ、ぼく?」なんて言いながら、いい匂いをさせて介抱してくれるみたいな苦しさと法悦が同時に介在するような感じかな?それともとても素敵で美しいお菓子を期待満々で口にしたら、中にハエが入っていて、ウエッて思って吐き出したらそのハエの腹の中から蛆虫がワシワシ出てくるのが見えて卒倒しそうなくらいショックを受けて、こみあげてくる吐き気を懸命に耐えていると突然、頭の中に声が聞こえて神の啓示に歓喜の涙を流してしまうみたいな感じ?
ま、とにかく舞城くんは相変わらず素敵なやつなのだ。汚くて辛くていいことなんかまったくない人生だとしても一生懸命正しくまっすぐに自分を信じて、人を愛して生きていかなきゃいけないなと素朴に感じさせてくれたりするからやっぱりすごく素敵なのだ。これからも彼の本はずっと読んでいきたい。ディスコ探偵は無理だったけど、だけどこれからも彼には注目していきたい。そう強く思ったのでありました。