読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

有川浩「フリーター、家を買う。」

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 はじめて読む有川浩の長編だ。今度ドラマ化されるということで早速読んでみたのだが、これがなかなかおもしろかった。このタイトルを見れば、ある程度話の内容が察せられる。フリーターという半分自由人のような生活を送ってる男が一念発起して家を買うまでの奮闘を描いているのだろうなと誰もが思うはずである。基本ラインはそういう方向で話が進むのだが、そこに深刻な問題が絡んでくるところが本書のミソ。自分勝手な生き方をする主人公と、亭主関白で結果的に妻を顧みることのなかった身勝手な父親。そして母はそういう無関心な男たちの間に立ち、尚且つ世間からの辛い風評に晒されて心労が重なり、重度の鬱病にかかってしまうのである。ここらへんの展開が意外で読ませる。むしろ、この部分が本書の中で一番おもしろい部分かもしれない。頼りなく揺れ続け、いつも誰かに監視されてると思いつめる異常な母親の状態を見て、身勝手な男たちが気持ちを入れ替えるまでが大いに読ませるのだ。また母親の現状を知って嫁ぎ先の名古屋から駆けつける姉の頼もしさがそれに相乗効果をもたらす。いいね、このお姉さん。

 

 あまりにも男前すぎて、惚れちゃいそうだ。

 

 そうして心を入れ替えた主人公誠治はなんとか就職先にも恵まれ、ほのかな恋にも出会い、開けてきた希望の未来へと漕ぎ出してゆくのである。この就職してからの展開はあまりにもステロタイプなので、それほど盛り上げる要素はない。だからぼく的には本書は前半部分が読みどころだと感じたのだ。

 

 さて、ドラマはどういう構成になってるのだろう。本書では後半にしか登場しなかった新しい職場の同僚になる千葉真奈美の役をあの香里奈が演じるということは、本とは大分違った構成になると思われるのだが、どうなんでしょうね?

 

 最後に本書はブックオフで購入したのだが、これがうれしいことサイン本だったのである。ということでここに写真を載せておこうと思う。

 

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