まずね、久しぶりの舞城本だってことで舞い上がってしまってたみたいで、なかなかこの本をみつけら
れなかったのが我ながらおかしい。もう、発売日の一日から鼻息荒く本屋に飛んでいって探してたのだ
が、まったく見あたらなかったのである。まあ、これが地方の弱さなのかなとあきらめて翌日には手に
入るだろうと思ってたら、やはりない。今度は違う本屋にも行ってみたがそこにも置いてない。
欲しいと思ったら気になるもので、このあいだはもう舞城舞城舞城舞城と頭の中で舞城コールが響いて
いた。そして三日目また違う本屋に行ってみたら、ふと見たラノベのコーナーに西尾維新の「化物語」
が置いてあって、またそれが箱入りの変わった本だったから目を惹いた。近寄って手にとって箱から出
してみたら、講談社BOXと書いてあった。おお、そういえばなんかまた新しいレーベルができたんだ
ったなと思いながら棚に返し、横を見ると本書の背表紙が見えたのである。
ガビー―――ン!と頭の中で鐘が鳴った。
おお、そうか、このレーベルでの新刊の中に君はいたんだね。いやぁ、すっかり舞い上がってて全然気
づかなかったよ。ずっと単行本探してたから、見つからなかったんだ。なにやってんだろ、おれ。
それにしても第一弾ラインナップの中に安達哲「さくらの唄」が入っていたのには驚いた。懐かしさに
パラパラ見てたら、そのまま読みふけってしまったではないか。この頃の安達哲作品には大変お世話に
なったのだ。でも、なんでここにこいつが入ってるんだろう?
それはさておき、久しぶりの舞城作品である。読む前から今回の作品があの獅見朋成雄を主人公にした
作品だということはわかっていた。しかし、それはあまり念頭におかなくていい。背中に生える鬣と成
雄という名前だけが継続している設定なだけであって、本書はあの「山ん中の獅見朋成雄」とはまった
く別物である。だから前作を読んでなくてもまったく問題ないくらいなのだ。
これは連作っていうことになるのかな?本書には七つの物語がおさめられている。それぞれ登場人物が
重なりあっているという共通項はあるが、物語としては独立したものになっている。本の体裁をみて、
なんか軽そうだなと最初は思ったのだが実際読んでみると、これが結構いいのである。
さて、ではどこがどういいんだろう?と考えてみれば、それがうまく表現できない。相変わらず、物語
は破天荒で世界は微妙にズレている。音速を超えるスプリンターなんてどうよ?空からどんどん降って
くる石の台ってどうよ?人を喰う白い玉ってどうよ?
しかし、それらとんでもない事柄が微妙にリンクして増幅しているかのようなこの世界が心地よい。
それに相変わらず舞城君は強いメッセージを放ち続けている。自分を信じること、自分がやれると信じ
ること。他人に惑わされず、自分の力を信じて物事を成し遂げること。
かあー、なによこれ、こういうことを強く発信してくる舞城君のスタンスが大好きだ。薄っぺらい本な
のに、結構心に残ってしまう。この感覚は「世界は密室でできている」を読んだときの感覚に似ている
かもしれない。だから、舞城君大好きなんだよな。