素敵で怖い短編が11編。この人の本格的なホラー作品を読むのは初めてなのだが、なかなか楽しめた。
収録作は以下のとおり。
「のぞき梅」
「影」
「樹の海」
「白い顔」
「人柱」
「上下する地獄」
「ステイ」
「回来」
「追いかけっこ」
「招き猫対密室」
「バベル島」
ミステリ作家らしく、構成で謎に拍車をかけ、前が見えない手探り状態でどんどん読ませる作品があったり、あまり見かけないシチュエーションのおもしろさでグイグイ読ませる作品があったりしてほんと飽きさせない。前者でいえば「追いかけっこ」や「招き猫対密室」がそれにあたり、後者でいえば「ステイ」や「回来」がそれにあたる。
また、オーソドックスな恐怖譚として描かれる「のぞき梅」や「影」や「バベル島」にしても、歪んだ悪意にも似た嫌な部分が底流にあるので、あっさり読めてしまうにも関わらず、何か釈然としないものが残って気持ち悪い。その中でも「人柱」の展開には少なからず興奮した。これはミステリとしてもなかなかいい線いってるのではないだろうか。さすが若竹七海、『五十円玉二十枚の謎』の出題者だけのことはあるなぁ。
というわけで、小粒ながらもそれぞれ妙に引っかかる部分があったりして結構おもしろかった。今度は長編ホラーの「遺品」でも読んでみようか。