黒いビュー・マスターは大きくステップを踏んでジェロニモの側らに降り立つと少しよろけて微笑んだ。
ぼくは青白い顔で怯えていた。どうして自分の顔色がわかるのかというと、第三者の目でその場を俯瞰し
ているからだ。これぞ夢の不思議、ザッツ・エンターテイメント!
ところで、大きな声ではいえないが、ぼくはチビっていた。それぐらいビュー・マスターの存在は偉大だ
った。圧倒的で、恐ろしく、少し罰当たりで、胸くそ悪かった。しかし、そこには刹那的な美しさもあっ
た。負ゆえの勝利とでもいおうか、マイナスであるのに、なぜか魅力があった。
一方ジェロニモはいたって普通で、おおいに普遍的だった。全身真っ白の衣装でかため、まっすぐ一直線
を目指しているかのように直立していた。真上を向いた顔は極限まで引っ張られているためか、首筋が異
様に伸びて見えていた。
二人は対称的であるがゆえに究極のシンメトリーだった。黒と白、わかりやすく馴染み深い。だが、ぼく
は怯えていた。黒の威圧に怯えていたのだ。かたや白は慰めなのだがいまはその威力を発揮していない。
めぐりめぐる舞台の中央には対峙する三人の男。ビュー・マスターとジェロニモとぼく。
やがて、ビュー・マスターの威容がくずれはじめる。温かい風が花びらと共に吹き、極限の緊張を強いら
れていたジェロニモの顔がゆっくり正面を向く。かわってビュー・マスターがこれ以上はないほど小さく
なっていく。ぼくの中から恐怖が耳鳴りと共に去ってゆき、ふくよかな女性に抱きしめられたかのような
安堵と慰めが訪れた。
その振幅が三千二百五十回繰り返されたあとに、ぼくは目を覚ます。