寺田克也の扇情的な表紙と、意味不明なタイトル。これだけ揃えば、もう読むのに躊躇はしない。本書の著者が「姉飼」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビューしたことは知っていた。しかし、「姉飼」にはあまりソソられなかった。なんか話が見え透いているような気がして、手に取る気がおきなかったのだ。
そこで、元来へそ曲がりなぼくは本書を読んでみた。
本書には9編の短編が収録されている。タイトルは以下のとおり。
・「むかでろりん」
・「鬼を撃つ」
・「MEET IS MURDER」
・「ピノコな愛」
・「八つ裂けの妻」
・「肝だめ死」
・「もうどうにもとまらない」
・「子供は窓から投げ捨てよ」
・「トワイライト・ゾンビ」
読んだ限りではそれほど新味もなかったし、とびきりおもしろいとも感じなかった。それぞれのタイトルからも推察できるように、ここで描かれるのは奇妙な世界だ。「むかでろりん」はへその部分に結節器が出いる人々の話だし、「鬼を撃つ」はタイトルそのままの世界だし、「MEET IS MURDER」では牛頭の人々が出てくる。「ピノコな愛」では等身大の巨大なピンクキノコが出てくるし、「八つ裂けの妻」は文字通り妻の身体がバラバラになってしまう。
新奇をてらうという意味ではそのとおりなのかもしれないが、話自体にふくらみも余韻もないからまったく残るものがないのだ。系統としては筒井康隆の路線を踏襲しているのだろうが、偉大な先達には到底及んでいないと思う。もう、この人の本は読むことはないだろう。