abeさんのオススメで本書を読んでみたのだが、これが大当たり。なんというか、もう読んでいる間中ず
っと気分が高揚してハイな状態だった。
とりあえず読み始めは手探り感覚で、海のものとも山のものとも知れないこの作家がいったいどんな話を
展開してくるのかと身構えていたのだが、10ページを過ぎたあたりからこれはもう間違いないと確信す
るにいたった。なにが良いといって、ピントの合った感想が書ける手合いでないところが凄くいい。主人
公は就職が内定して、あとは卒論を書いて卒業するばかりの女子大生堀貝佐世。二十二歳の処女。大学と
アルバイトとわずかな身内との接触で日々が過ぎてゆく、ちょっと親父の入った女の子。そんな彼女が卒
業して就職するまでの数ヶ月が描かれているのだが、これがなんともいい味わいなのである。適度なユー
モアが点在し、かといって軽いわけでもなく、まるでジョン・アーヴィングの小説のように突然悲劇が介
入してきたりする。特筆すべきは、このホリガイさんの『意識の流れ』である。妄想一歩手前の迷走思考
は読む者に驚きと笑いを提供し、それに伴う言動でさらに拍車をかけてくる。女童貞だというひとつの枷
が、彼女を大人になりきらない不安定で浮ついた存在に留まらせているところが読みどころ。それが解き
放たれたとき(といっても、このシチュエーションもなかなか驚きなのだが)彼女はやっと地に足のつい
た女として歩きはじめる。そしてラスト、これもある意味アニー・ブルーの「ブローックバック・マウン
テン」の女版的感触をもたせつつ本書は幕を閉じるのである。いやあいっぺんでファンになっちまった。
このあいだ読んだ栗田有紀より断然こっちのほうがいい。しかし、この人の作風は好き嫌いがはっきり分
かれてしまうかもしれない。両刃の剣的作風だが、それゆえにその魅力にハマったらこれはもうがんじが
らめなのである^^。