読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

「小説のタイトルを考えてみました」

昨夜『感涙SFベスト3』なんて記事を書いたもんだから、久しぶりにSFの分厚いのを読んでみたく

なって新刊書店に行ってみた。このところ英国SF界がなんだか騒がしいようで、早川文庫からも色々

おもしろそうなのが立て続けに刊行されている。気になったのは、チャールズ・ストロス「シンギュラ

リティ・スカイ」「アイアン・サンライズ」、アレステア・レナルズ「啓示空間」「カムズシティ」、

ケン・マクラウドニュートンズ・ウェイク」である。どれも超ド級のSF大作だ。くわえてどれもス

ペース・オペラの体裁をまとったハードSFである。

いったいどれにすればいいか、本気で迷った。そうして視線をさまよわせているうちに他の作品も気に

なってきた。マイクル・スワンウィック「グリフォンの卵」は短編集だが、なかなか歯応えありそうだ

し、ライダ・モアハウス「アークエンジェルプロトコル」はSFなのにアメリカ私立探偵作家クラブ

賞を受賞しているなんて変り種だし、ジョン・ザコーアー&ローレンス・ゲイネムプルトニウム・ブ

ロンド」も手軽に読めそうなユーモア・ハードボイルド調が大変魅力的だし、ニール スティーヴンス

ン「ダイヤモンド・エイジ」は単行本のときから気になってたし、ジェフリー・A. ランディス「火星

縦断」もサバイバルが加味されたハードSFの逸品らしい。

う~ん、どれにいたそう?ぼくはその棚の前に40分は居ただろう。あれこれ手に取って、ためつすが

めつして、解説読んで、直感も気にして、さらに隣のいい匂いのする美人も気にして悩みまくった。

で、結局二作品にまで絞りこんだ。チャールズ・ストロス「アイアン・サンライズ」とケン・マクラウ

ド「ニュートンズ・ウェイク」のニ作品である。ここで気になったのが、「ニュートンズ・ウェイク」

というタイトルの響きの良さである。

というわけで、ここから本題だ。ディレイニーの作品に「アインシュタイン交叉点」というのがある。

非常に難解なSFだということだからぼくは一生読むことはないと思うが、実はこのタイトルが昔から

大好きだった。実在の人物の名を冠してつけられているタイトルにとても惹かれた。なんかセンスいい

なーと単純に感心してしまった。それが今回は「ニュートンズ・ウェイク」ときたもんだ。背筋に電気

が走ったね、まったく。その昔、最悪のデザスター映画で「ダンテズ・ピーク」というのがあったが、

あのとき感じた衝撃と同じインパクトのあるタイトルではないか。そうそう「ダ・ヴィンチ・コード

ってのもありましたね^^。これらのタイトルは実在の人物の名を借りて、そこから受ける連想や印象

で物語の雰囲気を最大限に引き出している。センスがいいと効果絶大だ。

そこから夢想が広がった。自分でこのようなインパクトのあるタイトルをつけるとするなら、いったい

どんなタイトルにするだろうか?

これは無謀な試みだ。タイトルだけ考えるなんて、本末転倒ではないか。しかし、ぼくは、その無謀な

試みにしがみついた。世の中にはタイトルを先に思いつく作家もいるだろう。だから、本屋の早川文庫

の棚の前を占領しながら、ぼくはしばし夢想にひたったのである。

さて、いったい誰を使ったらいいだろうか?まずベースを決めよう。やはりSFがいいな。それか、フ

ァンタジー、ホラーまで範囲を広げてみるのもいいかもしれない。では、いったい誰の名を拝借すれば

いい?やっぱり物理学者か科学者がいいな。ええっと、どんな人がいたっけ?アルキメデスガリレイ

パスカルキュリー夫人?ファーブル?

う~ん、これくらいしか思いつかないぞ。じゃあこの中からだったら、誰がいい?語呂的にはガリレイ

かな、やっぱし。ガリレイって何した人だっけ?確か天文学者だったよな。地動説を唱えて裁判にかけ

られたんだっけ?ガリレイと何を合わせたらインパクトあるだろう?ガリレイガリレイガリレイ

ガリレイ・・・・・!←(思いついた^^)

ガリレイ・ダンス」これはダメだ。ダンスって、踊ってどうするんだよ。

ガリレイ・ハンマー」ハンマーってのはいいんだけど、どうもインパクト弱いなぁ。

ガリレイズ・ハンマー」う~ん、『ズ』をつけてもパッとしない。

ガリレイズ・レインボウ」凡庸だ。あまりにも凡庸だ。

発想をかえてみたらどうだろう?ガリレイと結びつかないものと組み合わせてみたらどうだ?松本清張

もそんなタイトル多かったじゃん。「眼の壁」とか「ゼロの焦点」とか「地の指」とかね。

ガリレイ・オレンジ」だめだめ。

ガリレイ・タイガー」あほらし。

ガリレイズ・キャンディ」・・・。

やっぱり科学用語みたいなのと組み合わせた方がいいかな?

ガリレイガリレイガリレイ・・・あかん。科学用語がわからん。

そういえば、星座はギリシャ神話からきてたよな。

ガリレイズ・ヘラクレス」だめだめ、名前重ねちゃだめだよ。

ガリレイ・オリュンポス」わけわからん。

聖書はどうだ?

ガリレイ・バイブル」ちょっといいかも。

ガリレイズ・クロス」なんか近づいてきたぞ。

ガリレイズ・プレーヤー」あんまりキャッチーじゃないな。

もうカタカナ表記にこだわらずやってみようか

ガリレイと十三人の盗賊」

「塩のガリレイ

ガリレイの憂鬱」

ガリレイヒポクラテスと本棚」

だめだ、だめだ。どんどん離れていってしまう。これでは暴走だ。やっぱり、こういうのって思いつき

やひらめきでは、なかなかいいタイトル出来ないんだろうな。神でも舞いおりてこないとこれだ!って

のが出てこないんだろうな。それにこんなところで長々と居座ってたら、そのうち店員に肩叩かれるか

もしれないぞ。隣のいい匂いのする美人もどっか行っちゃったし、ここらで・・・・・うん?神?神ね

え。神といえばゴッド。じゃあ、こういうのは?

ガリレイズ・ゴッド」点とっちゃおうか。

ガリレイズゴッド」どう?

あんまりか。なんかイマイチなんだよなー。帰ろ帰ろ。本買って帰ろ。

というわけで、志半ばでぼくは挫折したのである。長々とお付き合いくださった方がいたら、ごめんな

さい。もっと修行してきます。

ちなみに、買ったのはチャールズ・ストロス「アイアン・サンライズ」でした。

しかし、文庫本に1050円払うのは勇気いるなぁ。