読書の愉楽

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ダン・ローズ「コンスエラ 7つの愛の狂気」

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世の犬好きすべてを敵にまわしそうな「ティモレオン」の衝撃的な結末が印象深いダン・ローズの短編集である。本書には七つの話がおさめられている。愛の狂気と副題にあるから、それなりのつもりで読んだが、こりゃだいぶヒネクレている。すべての話が主人公の思惑通りにいかないところがおもしろい。この短編集に出てくる男たちは、愛に盲目的であまりにも従順。そして翻弄する女たちは普通じゃないときてる。表題作の「コンスエラ」なんか男にとっちゃ悪夢みたいな話だ。愛を試す方法としてコンスエラがとった方法は現実離れしていておぞましい。ぼくなどこんなことされたら、たとえ相手が長澤まさみであっても、山田優であっても至上の愛を貫き通せる自信はない。しかし、これがかなり読ませる。おもしろすぎだ。解説で金原氏が言及しているが、ダン・ローズの描く一連の世界はグリム童話の残酷さ、皮肉、滑稽さを連想させる。ほとんどファンタジーの世界なのだ。寓話的であり、一見バカバカしいにもほどがある世界なのだがそれが逆に強烈なインパクトをあたえ、忘れがたい作品となっている。

7つの話の中で一番気に入ったのが「ヴィオロンチェロ」。洗練されてて、ちょっと切ない。ベトナムが舞台ってのもいい。美しすぎる話だ。

「ティモレオン」に続いて本書を読んでダン・ローズは目が離せない作家となった。こういう作家には出会ったことがない。ヒネクレた厳しさとユーモアを合わせもった絶妙の匙加減をぜひ味わって頂きたい。

尚、本書はつい最近文庫になった。中公文庫である。「ティモレオン」も同様に文庫になっている。

この奇妙で、残酷で、一味違うダン・ローズの作品群を読まないでいるというのは本読みとして非常にもったいないことだと思う。是非、是非この二冊は読んで頂きたいと思う次第でございます。