北上次郎の書評が好きである。なんといえばいいか、彼の書評は気持ちを鼓舞するのだ。
たとえばそれがまったく知らない作家のものだったとしても北上書評にかかってしまえば、はやく読ま
なきゃいけないと焦燥感にかられてしまうこと請け合いなのだ。
だから彼の書評を読むと、My本棚に新たな作家連中が勝手に増えてしまう。なんとも困った書評家さ
んなのである。
彼の書評は、本から受けた衝撃や興奮や感動をストレートに表現することからはじまる。たとえば、こ
んな感じだ。
『すごいすごい。読み始めたらやめられない。どうして、こんなにすごいシリーズを読み落としていた
のか』
『美しい小説だ。胸に残る小説だ』
『いやはや、面白い。本書のゲラを読み終えるなり、私、書店に走ってしまった』
『読み終えてしばらく、言葉もない。こういう小説をどう紹介したらいいのか、私にはまったくわから
ない』
『本書を読み終えたときの興奮はまだ覚えている』
あまりにも平易でそのまんまの感情表現が、逆にストレートに胸に響いてしまう。これは、大笑いして
いる人につられてこちらも笑ってしまう感覚に似ているのかもしれない。
だからついつい読んでしまう。そして彼が熱く語る本を求めて書店に走ってしまうのだ。
しかし基本的にこの人の好みはぼくと合致しない。なぜなら、ぼくは彼が偏愛する冒険小説もギャンブ
ル小説も好みではないし、スポーツ小説や恋愛小説のいい読者ではないからだ。
だから、彼の書評に煽られて読んだ本がおもしろくなかったということもある。
また、それ以外の作品でも彼が熱く語っている本であるにも関わらず好きになれなかった本もある。
逆に彼の書評によって出会えた作品もある。下田治美「愛を乞う人」がそうだったし、山本文緒「パイ
ナップルの彼方」がそうだった。
好きな作品、嫌いな作品ひっくるめて彼の書評が好きだ。北上次郎は、ぼくが偏愛する書評家なのであ
る。これは、プチ自慢になるのだが、今回この書評集は彼のサイン本を手に入れることができた。
こんな感じ↓
ミーハ-なので、とてもうれしいです^^。