普段はこういう本は読まないのだが、読みはじめるとついつい引きこまれてしまう。
本書は早川書房が10月6日に刊行する本のモニターアンケートに応募して、送ってもらった発売前の
簡易製本なのである。だから読んでアンケートを返送しなければならない。なかば義務的な心情で読み
出したのだが、これがかなりおもしろかった。
一匹のラブラドール・レトリーバーが巻き起こす騒動がユーモアたっぷりに語られて笑いを誘う。
親の血ゆえか、このラブラドールはいってみれば制御不能の破壊マシンみたいなもので、無邪気に遊び
ながら数々の伝説を築きあげていくことになる。
数え切れない多くのものがこのマーリーの口の中に消えていった。ペーパータオル、ワインのコルク、
チェス駒、瓶の蓋、バスタオル、18金のネックレス。
また、巨体ゆえ多くのものが破壊された。雷を極度に怖がる時など、家の中がサブマシンガンで一斉射
撃を受けたような惨状になった。
人の股間を嗅ぐ、トイレの水を飲む、抱きついて押し倒す、よだれまみれにするなんてのは当たり前。
しつけをしようとしても、遊んでもらう気満々のマーリーには通用しなかった。
そんなおバカな犬を著者のグローガンは心から愛した。いくらひどい目にあっても、恥ずかしい目にあ
ってもマーリーは家族の一員であり、大事なソウルメイトだった。
やりたい放題で、かなりいかれた犬なのだがマーリーには献身的愛情と純真な忠誠心があった。マーリ
ーがしめしてくれた無条件の愛情は、多くの幸せをもたらしてくれた。
ほんとにこの犬は得がたい存在だ。愛すべき忠犬だ。どんなにバカで迷惑をかける犬だとしても、そこ
には著者の愛情が存在するから、読んでるこちらもマーリーという犬と一緒に遊んでいる気分になる。
また本書はマーリーと共に歩んできたグローガン一家の家族の歴史そのものでもある。
妊娠や流産、転職や引越し、また近所で起こった傷害事件やマーリーの映画出演など次から次へといろ
んな事件が持ち上がる。
全米で200万部を越すベストセラーになっているというのも頷ける。本書はおもしろい。
マヌケでおバカだが、愛すべき犬であるマーリー。彼という存在がいかに偉大であったかがよく伝わっ
てくる。
たかが犬、されど犬。マーリーのふりまく陽気でやんちゃな風は、間違いなく誰をも虜にしてしまう。
数々の微笑ましいエピソードをありがとう。ブリーダーをもあきれさせてしまうその天真爛漫さをぼく
も愛す。本書は、犬好きにはたまらない読み物となるだろう。犬好きでない人にも大きな感動をもたら
してくれるだろう。そんなことはないだろうって?いえいえそれだけは断言できます、現にぼくがそう
だったのだから。