今野敏はいまひとつの作家ではないか?
作品数は多いがこれといった代表作もなく、ブレークしたこともない。かくいうぼくも彼の作品は本作しか読んだことがない。今野敏はこの作品でブレークするはずだったのだ。しかし、そこまでにはいたらなかった。この作品の次に出た「慎治」というのがインパクトなかったのも災いしたのかもしれないそんな今野敏なのだが、本書はなかなかおもしろかった。
ゲームそのものを題材にした物語というのは、本書が初めてだった。なるほど、おもしろい。
日本が封印されているゲーム?どうしてゲームの販売を阻止しようとする組織があるのか?
まず、感心したのがこの「蓬莱」というゲームのリアリティだ。この『シム・シティ』と『信長の野望』を組み合わせたようなゲームは、海を隔てた大国から来た人物を設定するところからはじまる。
海を渡る商人、遊牧民の末裔、西洋から何世代にもわたって旅を続ける民族。プレーヤーは自分自身で主人公のキャラクターを設定するのだ。同時になぜやってきたのかという目的も設定しなければならない。侵略、宗教の布教、流浪、逃避行など様々な目的を選ぶことができる。
ここで浮上してくるのが「徐福伝説」である。
恥ずかしながら、ぼくは本書を読むまで「徐福」という人物のことを知らなかった。
秦の始皇帝に申し出、不老不死の薬を求め海を渡った徐福が日本に渡来したという伝説が日本各地に残っている。徐福=神武天皇という説もあるが、真相は定かではない。現在でも日本の各地に徐福上陸地の記念碑が残っているらしいのだが、いったいこの人物はどういった人物だったのか?
本書ではそういった伝奇的な要素とバーチャルなゲームの世界がリンクし、壮大で魅力的な物語が展開されることになる。
スケールが大きいようでそうでもないのが少し不満だが、でもおもしろかった。もっとこういう話を読んでみたいとも思った。『蓬莱』ゲームもプレイしてみたい^^。