ホルモーとは何ぞや?ホルモンではなく、ホルモー?
まったくたいしたセンスではないか。タイトルでがっちり心をつかまれてしまう。
そしてそして、驚くべきはその内容だ。
本書は、第4回ボイルドエッグズ新人賞を受賞した著者のデビュー作である。こんな賞があったなんて
まったく知らなかったが、選考委員には直木賞を受賞した三浦しをんや、ネガティブで有名な滝本竜彦
なんかがいるのでなかなかしっかりした賞みたいだ。
そんな新人賞でデビューした本書は、およそ新人らしからぬ完成度で読む者を圧倒する。
とにかく、うまい。話の展開など、うまい具合にひねってページを繰る手を止めさせない。主人公が大
学生ということもあり、青春の爽やかさや恋愛の機微、学生特有のアホらしさなんかが無理なく自然に
描かれていて好感がもてる。特に、主人公安部のツレである高村の変容には笑ってしまった。
この人、シチュエーションをうまく操作して笑える場面を作りだす才がある。そこらへんも新人とは思
えないうまさだった。
ところで、気になるのは『ホルモー』だろう。いったいそれは何なのか?本書の主人公安部は、大学の
サークルの勧誘につかまり、とんとん拍子でそのサークルに参加することになってしまう。そのサーク
ルというのが「京都大学青竜会」。このセンスのかけらもないネーミングのサークルは、いったいどう
いう活動をしているのか?そして、驚くことに京都に散らばる大学で目的を同じくしたサークルが、あ
と三つもあったのである。それが「京都産業大学玄武組」、「立命館大学白虎隊」、「龍谷大学フェニ
ックス」というこちらもまたセンスのないネーミングのサークルだ。
さて、ここで「ホルモー」の正体をバラしても決してネタバレにはならないと思うので、そろそろ明か
そうと思う。「ホルモー」とは、式神や鬼を用いて十人と十人で対戦を行う集団競技のことなのだ。
式神?鬼?と思われた方、あなたの反応は正しい。ぼくもそうでした。平安の世ならいざ知らず、現代
において鬼や式神なんてナンセンスもいいところだ。なんだ、アニメの焼き直しみたいな作品なのか。
ぼくも、そう思っていたのである。
しかし、読んでみればわかるが、これがなかなかどうして読ませるのである。というか、最後のほうで
は主人公と同化するくらいのめり込んでしまった。地元京都が舞台っていうのも、うれしかった。
というわけで、この本当たりである。読んでよかった。大いに楽しみました。興味をもたれた方は是非ど
うぞ。