ショーといえば、ニューヨーク。彼はニューヨークを舞台に珠玉の都会小説を数多く残している。
そんなショーが、こんな作品も書いてたんだと驚いてしまう短編集である。
各作品について一言。
「神、ここに在ませり、されど去りたまいぬ」
少々物足りなさが残る作品。パリのアメリカ女性を描いているが、ボサノヴァが似合いそうなけだるさで、ぼくの好みではない。
「賢く公正なるものすべて伝わるところ」
青春のほろ苦さを驚くほど爽やかに描いた佳品。映画にしたら素敵だろうな。
「混迷のなかのささやき」
先の二作品とはガラリと趣きが変わり、ファンタジー色の濃い作品。
これを読んでショーが好きになった。良質のコメディをみているようで読んでいて楽しかった。でもこの作品と次の『マニコン溶液』はショーの作品の中では異色作なのだそうである。
「マニコン溶液」
うだつの上がらない研究所員がひょんな事から黄色い生物を即死させてしまう溶液を作ってしまうお話。物語は、その溶液をめぐってエリートでやり手の科学者を巻き込んで、ああだこうだと展開し、どんどん大きくふくらんで、当の本人は初めての表舞台と裏の世界の駆け引きの中で右に左に振り回されてゆくのである。 オチがなかなかチクリとして奇妙な味わいを残す。
「小さな土曜日」
小背で悩む書店員の青年が、背の高い女の子達にあこがれ四苦八苦するのだが、良質のコメディに仕上がっていてなかなか忘れがたい作品。ストーリーのテンポもよく、くいくい読ませる。
以上五編、簡単に紹介した。傑作とまでは言わないが、総合的にいい作品集だ。特にラストの三編はおもしろい。これは読んでソンのない作品集であろう。