物語は破綻しているが、魅力ある展開だった。
人の不幸をコレクションする男の依頼を受けた「俺」は、自分の子供の首を切断した女の調査に赴く。
おお、なんという凄まじい設定!身の毛もよだつとはこのことではないか。これは心してかからねばなるまいてと思ったあなた、いやいやちょっとお待ちください。これね、読めばわかるけどホラーの体裁で出版されているにも関わらず、どちらかといえばユーモアさえ感じられる作品なのである。
ぼくは、この本読んでこの人いっぺんに好きになってしまった。
無粋を承知で言わせてもらうなら、センスがいいのである。ホラーとしてではなく、物語世界を構築するにあたってそのセンスの良さが光っている。
上記のあらすじを読むと、まったく不気味な「黒い家」系のホラーのように思ってしまうのだが、いざひもといてみると、なんとも奇妙なユーモアのあるファンタジーのようだった。
それも読み手の脳髄をビンビン刺激するかなりヤバい作風だ。暴言を承知で言わせてもらうなら、もう筋などどうでもよいとまで思えてくるくらいヤバいのだ。
著者の平山夢明は、現在長編小説としては本書と「SINKER ― 沈むもの」の二冊しか発表していない。短編に関しては井上雅彦編の異形シリーズにいくつか寄稿しているが、長編はこの二作のみなのである。その他実録怪談や都市伝説を集めた本は何十冊も出てるが、これは小説とは思わない。
う~ん、この人の小説をもっと読みたい。というか、はやくもっともっと分厚い本を出して欲しいものだ。
それにしても、ピーナッツ・バターってああいう風に作るのかあ。なるほど、勉強になるなあ。