神話と伝説に彩られた淫らで好色な物語である。
穢れを知らない無垢な天使と肉感的な美の象徴であるヴィーナスが出会えばどうなるのか?
リョサはあらゆる角度からイメージを呼び起こし、様々な模倣を加えラテンの国で起こったフランス的な物語を描いている。
悲劇にもかかわらず物語には暗さがない。底辺に流れているリズムはあくまで明るい。そして軽い。
これはリョサがしかけた言葉のイメージがそうさせているのであろう。
これは官能小説なのか?
そうでもあるし、そうでもない。読み手の許容力次第で変幻自在に姿を変える小説なのである。
本書は以前福武から刊行されていた。みなさんもご存知のとおり福武の本は絶版状態である。
この本は復刊して欲しいものだ。