くすぐりの上手い小説だ。謎が未解決のまま終わっているのに、まったく不満に思わない。
いろんな解釈があとに残されるわけだが、とりあえずぼくはこのままでいいと思う。
ていうか、謎を解明するのに再読してじっくり考えるなんてできない(笑)。
なんにせよおもしろいと思ったのは、ウッツ男爵の人物像だ。特徴のない顔、語り手などは最初の頃など「口ひげをはやしていたかどうか思い出せない」なんてさらっと言ってるのだから笑ってしまう。
というか、ここからもうミステリは始まっているのだ。
この稀代の蒐集家は、なぜかしら哀愁を帯びている。それとなく儚いイメージがつきまとっている。
物語の冒頭から、この人物の葬式の場面だったからだろうか?
でも、普通このての話って栄華をきわめて没落していくって過程が普通なはずなのに、当のウッツ男爵は、ずっとみすぼらしい。
このへん『プラハの春』真っ只中のチェコを舞台にした作者の着眼がうまくいかされているんだと思うなかなかおもしろかった。