苦手なスパイスリラーだったが、予想外に楽しめた。
ヒットラーも一目置いているというドイツ屈指のスパイ『ディ・ナーデル』。彼が手に入れた情報は、
大戦の行方を左右するノルマンディ上陸作戦に関するものだった。
追い詰める英国の陸軍情報部。逃げる『針』。
追いつ追われつのサスペンスとは別に語られる、本筋とはまったく関係なさそうなカップル。
二つの話がリンクして、物語はロマンス的要素も加わり一気に加速する。
歴史の事実は承知してるから、結果がどうなのかということはわかっている。それでも読ませる筆力は
たいしたものだ。
ラストも大変気持ちのいい終わり方だった。ミステリーとしてのサプライズはないが、この四百ページ
以上を飽かずによませてしまうのはやはりたいしたものである。
ミステリーベストに選出するような作品ではないが、おもしろかった。
本書は、80年代に映画化されている。映画のほうもなかなかの評判だったようだ。今度さがして観てみ
たいと思う。