読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

トマス・ピンチョン「競売ナンバー49の叫び」

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 ぼくが読んだピンチョンは、本書一冊きりである。

 

 この本を読んだのも10年以上前だ。それから現在にいたるまで1冊も彼の本を読んでない。あの「重力の虹」も書棚におさまってずっと威圧的に睨みをきかしている。

 

 それほど本書から受けた印象は、強いものだった。

 

 かつてサンリオ文庫から出ていた幻の作品が筑摩から復刊されたと知ってとびついて購入し、むさぼるようにして読んだのだが、そこに展開されていた物語はテクストとして機能するあまりにも隠喩にみちた物語だった。

 

 主人公のエディパが、一通の手紙を受け取ることから世界がはじまる。

 

 かつての恋人であったカリフォルニアの大金持ちピアス・インヴェラティが亡くなり、エディパを遺言執行人に指名しているという。いまでは、まったく交流もなかったかつての恋人が、どうして彼女を指名したのか?

 

 腑に落ちないまま、インヴェラティの弁護士のもとを訪れたエディパは、迷宮のような歴史の謎に直面することになる。

 

 エディパは、啓示に翻弄される。行く先々にあらわれるなんらかの印。

 

 誰もがみなグルになって自分をだましてるようにも思えるし、まったくの偶然が重なっただけのようにも思えるし、本当の啓示のようにも思える。

 

 まさしく迷宮。クラクラしてしまう。

 

 あらゆるものに意味をもたせるというのは、常人の技ではない。本書には、詳細な解注がついていて訳者の志村正雄氏が懇切丁寧に解説している。とうていこの解注がなければ、本書に隠された数々の隠喩を理解することはできない。

 

 百科全書的な作家であるピンチョンここに在りって感じだ。

 

 もうそろそろ、あの怪物的傑作の「重力の虹」に手をつけてもいい頃かもしれない。

 

今 回はおまけとして、カバーをはずした画像もアップしておきます。

 

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 なかなか斬新なデザインですね^^。