読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

鈴木智彦「サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う」

サカナとヤクザ ~暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う~ (小学館文庫)

 

 何が儲かって、どれくらい儲かって、リスクはどれくらいで、それを天秤にかけたら、それはやるべきことなのか、そうじゃないのか。

 人は、生きていく上である程度のリスクは背負える分だけを自分の中で処理している。見込みというか、言い方を変えれば先行投資ともいうのかな?しかし、それは社会規範に則したルールのもと施工されてゆく。

 危険を冒して規格外の儲けを得る。命や社会的地位など、様々な失くしてはいけないものを危険にさらして、莫大な財を得る。そういう道を敢えて選ぶ人がいる。

 本書は、日本独特の発展をみせた漁業とそれに群がるヤクザを綿密に取材したルポである。本書を読むと、漁業とその筋の人たちが密接に関わりあっていたことがよくわかる。

 しかし、この問題は根深い。魚を獲ってたとしても、それを買って加工する者がいて、その加工したものを商品として売る者や提供する者がいて、それを買って消費する者がいるという図式が成り立たないと、儲けはうまれない。ということはですよ、あなた!われわれも、その片棒をかついでいるってことじゃないですか?でも、そんなことがわかったところでカニやウニやウナギやアワビなんてご馳走を一切食べないなんてことできますか?いやいやできないよね。

 すべてがそうでないにしても、また、そういう商品が流通しないようさまざまな試みがなされ法改正なんかも進んでいるらしいが、それでもこういった必要悪的な大きな歯車は止められていないのが現状だ。不正は不正として、断固として取り締まらなきゃいけないというのは建前だが、そういったとめることができないうねりを見過ごしてゆくのにも違和感をおぼえる。かといって、個人の見解で改められるものではないし、こういうことを知るということが本を読む意義なのだとはわかっているが、いやはや、知って良かったのかどうか、いまでも?なのだ。

 上記のことに関係ないけど、本書の著者の文章はところどころ気になるところがあった。ストンと落ち着かない文章というか、なんか居心地悪いんだよね。