現在、アメリカでもっとも注目されている作家の一人、ジュンパ・ラヒリの第一短編集です。本にのっている著者近影をみて驚かないで下さい。それほど、この人は美しい。インド系だから、和洋が最上の形でブレンドされた神々しいまでの美しさです。
それはさておき、とにかく本書は読んでいて心地いい。
派手な装飾もなければ、大きな事件が起こるわけでもない。ただ普通の人々の日常が描かれ、家族、身内といった小さな世界で話が進行するだけ。
だが、どうでしょうこの豊かさは。全編にわたって強弱はありますが何がしかの悲哀が漂っています。
祖国を離れて異国で暮らす悲哀。インドの底辺で生きる人々の悲哀。大胆さと慎ましさが微妙にブレンドされクールな筆勢のなかに様々な悲哀といくばくかの笑いをにじませる。謙虚さとたくましさが同居しているような心やすまる安心感。
ラヒリの視点は高みから見下ろすようでいて、しっかりやさしい。描く人々はスマートで民族色が特に強調されてませんでした。
ほんとうに、この人は得がたい作家です。
一生ついていきますと、心に誓いました。