死人が生き返るという、ありえないシチュエーションでこれ以上ないほど完璧にミステリロジックを構築
したのが本書「生ける屍の死」です。
ニューイングランドの片田舎で霊園を経営するバーリイコーン一族。しかし、世の中では死者が生き返る
という怪現象が起こり始めていた。折りしも、霊園内でも殺人者が徘徊しているらしく次々と殺人が起き
ていく。しかし、殺しても生き返ってしまう状況でなぜ殺人が行われるのか?いったいそこになんの意味
があるのか?事件の解決を試みるパンク青年のグリン自身が、殺され生き返るという前代未聞の状況で、
物語は、あまりにも論理的にその幕を閉じる。
このホラーともSFともつかぬ奇妙な設定で、いかにミステリマニアをも唸らすロジックを展開できるの
か?
登場するトリックは、古典に精通した著者が偏愛する過去作品へのオマージュに満ちています。密室、毒
殺、殺人予告に入れ替えトリック、さらには禁じ手とされる双子トリックまで。節操のないくらいのトリ
ックオンパレード。さらに、そこに死者が甦るという状況が加わることによって、思いもよらぬ効果があ
らわれるんです。すなわち、誰が死んでいて、誰が生きているのか?
いったい、この混乱した状況をどのようにまとめ、どうやって理路整然とおさめることができるのか?
山口氏は、その高い高いハードルをいとも軽々と飛び越えてしまいました。
この作品は、氏のデビュー作であり、最高傑作なんです。
未読の方で、ミステリマニアの方(そんな人いないかもしれませんが)どうぞ挑戦してみて下さい。
身震いするほど、素敵なミステリですよ、本書は。