読書の愉楽

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山田風太郎「魔界転生」

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 いわずとしれた、風太忍法帖の最高傑作ですね。

 

 ぼくがこの本を読んだのは、まだ中学の時でした。

 

 風太忍法帖のおもしろさは充分わかっていたんですが、本書のおもしろさはケタはずれでした。振り返ってみても、本を読むのに寝食忘れたのはこの本だけです。

 

 切支丹の弾圧に対して、島原で乱が起こったのは1638年。抵抗する農民は3万7千。それに対し徳川幕府は12万に及ぶ軍勢を動かした。

 

 首謀者はかの有名な天草四郎

 

 物語は、この戦いが終わったところから始っています。

 

 この世に未練を残した、強い慙愧の念を持った剣豪たちが次々に甦り、魔人と化す忍法「魔界転生」。それをあやつるのは、伴天連の妖術を我が物とする森宗意軒。そして、彼が甦らすのは、天草四郎宮本武蔵、荒木又右衛門、宝蔵院胤舜、田宮坊太郎、柳生但馬守宗矩、柳生如雲斎という天下の剣豪たち。

 

 謀反を企てる紀伊大納言頼宣をバックに、これらの妖人が集まり、天下の大乱を引き起こそうとします。これに対するのは、隻眼の剣豪柳生十兵衛

 

 さて、この物語、強烈なサスペンスと意外なことにユーモアに溢れています。

 

 読めばわかります。映画やゲームのメディアでは、ことさら妖美さと怪奇性を強調していますが、けっしてそんなことはない。本書には類まれなユーモアがある。

 

 そして、髪の毛が逆立つほどのサスペンス。

 

 サスペンスという点では、本書の前作にあたる「柳生忍法帖」のほうがスゴイかもしれませんが。こちらは、いったいこの先どうなるんだ?という場面が続出します。十兵衛は、この窮地をどうやって切り抜けるんだという場面がね。

 

 でも、総合的にみて、やはり本書は忍法帖の最高傑作ではないかと、ぼくは思います。言い切っちゃいます。風太忍法帖は、長ければ長いほど良い。

 

 どうぞ、未読の方はお読みください。