この本は、医術の開拓に焦点があてられた、まさにページを繰るのももどかしい本でしたが、構図的には『復讐』の物語でした。最初から終わりまで、『復讐』が語られ複雑な思いで一喜一憂しましたが、カタストロフィはおとずれない。どの『復讐』にしても勝者と敗者が明確にされない。そこで不満を感じるところですが、作者の巧みな舵さばきでもって読者に不満を与えず物語は進行していきます。この作者はやさしいんでしょうね。描かれるシーンには酸鼻な場面が多々ありますし、性愛描写にしてもダイレクトで臆するところがありませんが、主要な登場人物の関係をみてると、この作者は非情な扱いをしてません。
いやあ、それにしてもおもしろかったなあ。
医療の黎明期のまさにじれったい進捗状況は読んでいて歯がゆいほどですが、実際この時代はこんなことしてたのかと感心もしました。人種問題や奴隷制度等も盛り込んで、アメリカが生まれる以前のニューヨークが目の前に展開します。厚さにひるまず是非是非読んでください。