これってノンフィクションなんですね。てっきり小説だと思ってました。ってか、ほとんど小説ですよ
ね?作者自らが看取った母との最後の日々。生あるものが、灯火を燃え尽くして魂がぬけていく様が肉親
の目を通してるのにも関わらず、ドライで客観的な視点で描かれます。お涙頂戴じゃないがゆえに、看取
る側の心理的な揺れが描かれず、逆にストレートに厳しい現実が胸に迫ってきます。冷徹なまでの完結し
た描写は写実的で、どんなに悲しいだろう時でも読者をその場面に定着させてしまう。肉親の死っていう
のは、大きな嵐みたいなもの。死で完結する一連の行程は多大な心労と肉体的負担を強いられる。そし
て、死が訪れたあとは大きな穴が心に開いてしまい、虚脱感と空虚な闇が身を包んでしまう。何にせよ個
人個人の大きな出来事には違いない。作者の筆は心理面を排除することによってその行程を崇高なまでに
美しく描いていました。ちょっと真似できないですね。