読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ピーター・ストラウヴ「ゴースト・ストーリー」

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英米では、スティーヴン・キングと対をなす評価を得ているピーター・ストラウヴの代表作です。

この作品の成立は、ストラウヴがキングの「呪われた町」を読んだことが発端となっています。

呪われた町」にインスパイアされたストラウヴは、一念発起、古今東西の幽霊譚を読み漁り、本書を書

き上げました。

そのためか、本書のプロットは非常に「呪われた町」と似ています。しかし本作は、ただの本歌取りにと

どまってはいません。

本作を読んだ誰もがいうことですが、この作品はゴースト・ストーリーとして百科全書的な仕上がりとな

っており、登場するファクターは、幽霊だけにとどまらず吸血鬼や狼男その他の怪異現象まで網羅されて

います。

ストラウヴは、それらを物語のなかの物語という入れ子構造でたたみかけ、メタフィクション的な手法で

全体をまとめています。ヘンリー・ジェイムズの朦朧法にものっとったこの語りの妙はいわゆる『騙り』

にも通じて、いっそう効果を上げています。

日本での評価はいささか良くないものでしたが、ぼくにはすこぶるおもしろく、大満足で読み終えまし

た。

いまでは絶版になっているのも、むべなるかな。しかし、個人的にはとても印象に残った1冊でした。