読書の愉楽

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樋口毅宏「二十五の瞳」

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 誰もがタイトルから連想するように本書は壺井栄二十四の瞳」をモチーフにしている。もちろん舞台は小豆島。あの小さい島を舞台に平成、昭和、大正、明治の四つの時代の物語が描かれる。それが一筋縄でいかないのである。それぞれの時代においてさまざまな事件や出来事があるのだが、これがかなり常軌を逸した物語になっていて、その自由な発想に驚いてしまう。あきらかに実在した人物をモデルにした話があるかとおもえば、実在した人物そのものを描いた話もあり、まるっきり作者の創作である話まで混入されて、いったいどこまでが事実でどこからが虚構なのかわからなくなってくる。

 

 作者の筆は自由自在にすすみ、いったいどこに落ち着いてゆくのかまったく予測できない。全部通して読んでみてようやく全体を覆う一つの得体のしれない物体が意味をもってくる。タイトルがなぜ二十五の瞳なのか、その意味がわかった瞬間呆れかえってしまうか、驚愕に打ち震えるかは読む人の感性で大きく左右されるだろう。

 

 はっきりいって、この本は完成された作品ではないと思う。それは水準のことではなくて形式の美としての話である。だから洗練や調和から感じられる美からはほど遠い印象を受ける。だが、荒削りのダイナミックな迫力や、粗野だが親しみやすい部分があって、これはこれでたいへん魅力的なのだ。

 

 なによりもまずその自由な発想に感服した。最近、これほどへんてこりんな話は読んだことがなかったのでかなりのインパクトだった。そう、ぼくは本書のタイトルの意味を知ったとき、ほんと仰けぞって驚いてしまったのである。だって、ああた、二十五の瞳があんなことになってるなんて・・・・・。

 

 この先を知りたい方はぜひ本書をお読みください。きっと驚くことになるでしょう。