読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

掌編三編。

歩いていると、妙に目が回る。クラクラクラクラ足が地につかない感じで、気持ちが悪い。

ええい、クソ!何なんだ、このおぼつかない感じは!

頭を振るが、酩酊感にさらに拍車がかかってしまい、とうとう膝をついてしまう。

ううう。なんかムカムカしてきたぞ。もしかしたら吐いちゃうかもしれない。

しばらくそのままで、動悸がおさまるのを待っていると、場面が暗転。





おそらくそこは世界で一番恥ずかしい場所なのだろう。どこがどう恥ずかしいのかは、各自で想像していた

だきたい。自分が一番恥ずかしいシチュエーションを頭に思い描いて頂ければ幸いである。

で、ぼくはそこでもじもじしていた。だって、ハズイんだもの。とことんハズイんだもの。自分がこんな

ところに身をさらしてるのが信じられないくらいハズイのだけれど、どうしようもない。これだったら、

全身に蜜を塗って、アリの巣の前で縛られているほうがマシだと思うのだが、いたしかたない。だって、

そうじゃないんだもの。世界で一番恥ずかしい場所にいるんだもの。やがて、動悸が激しくなって、ぼく

は自爆しようとする。しかし、自爆する寸前に場面は暗転する。





車を運転するのは得意だが、どうしてドアがないのかがわからない。びゅんびゅん風が入ってきて目もあ

けてられないくらいだから、あぶなくて仕方がない。隣には黄色いコッカースパニエルがシートベルトを

してちょこんと行儀よく座っているが、あまり触れないでおこうと自分に言い聞かせる。だって、あきら

かに変な感じだもの。

目に涙が滲んでよく見えないのだが、車の行く手には大きな城が見えてくる。ディズニーランドのシンデ

レラ城みたいな真っ白な城だ。すると隣の犬がクンクン鼻を鳴らし出した。横目でチラッと見ると、なん

だか形が崩れだしてるみたいだったので、鳥肌がたち動悸が激しくなってくる。

ぼくは犬のクンクンを聞きながら、ゆっくりと気を失う。暗転。