ずっと以前にフランスの作家には怪物が多いなんて話をしたことがあるが、このマンディアルグもとんでもない怪物なのである。そんな彼の問題作がこのたび復刊されたので、簡単に紹介しておこうと思う。
本書は訳者である澁澤龍彦をして『エロティシズム文学の奇書、あるいは文学的ポルノグラフィー』と言わしめた奇書であって、ポルノという体裁ながら一筋縄ではいかない残酷さを兼ね備えた本なのである。
ポルノと残酷さの併用というと一番に思い浮かぶのがサドであるが、このマンディアルグの描く世界はどちらかというとバタイユの描く世界に近いかもしれない。と、ここで気がついたのだがこのサドもバタイユもフランス人であり、いわずとしれた怪物作家である。
バタイユの「眼球譚」や「マダム・エドワルダ」などもなかなか突拍子もない作品で、初めて読んだときはかなりぶっ飛んだのだが、この「城の中のイギリス人」はその比ではないのである。
ストーリーとしては非常にシンプルで、主人公である『私』がイギリス人でありながらフランス風のモンキュという名を名乗る紳士の城に招かれるところから幕を開ける。その城ではモンキュ自身が性的興奮を得るために数かぎりない性的実験を行っており、『私』は恐ろしくも蠱惑的な世界に取り込まれていくことになる。
作者自身が出来るだけ残酷で破廉恥でエロティックな物語を書きたかったというとおり、本書にはあらゆる行為が描かれる。へたをするとこれは友成純一が書いてるんじゃないかと思ってしまうほどだ。
その行為については詳細は書けない。ここで書くことはできない。だって、そんなことしたら人格を疑われるもの^^。とにかく、もしこの本に興味をもたれて読んでみようなどと大それたことを思った方は、心して読んでいただきたい。でも、これだけは忠告しておこう。ご飯が食べれなくなっても責任は持てませんからね。それでも読もうと思われた方、あなたはエロスの黒い神に出会うことでしょう。