「女による女のためのR‐18文学賞」というのは、女性が書く官能小説のことだと思い、あまり気にもとめていなかったのだが、本書の日向蓬にしろ豊島ミホにしろ宮木あや子にしろ、一般作品にも進出してきて結構目が離せない作家をいろいろ輩出してきたなと思うのである。特に豊島ミホの活躍は目を見張るものがあると思うが、どうだろうか。この人はそのうち直木賞なんかとっちゃうんじゃないかと思ったりもするのである。で、本書の日向蓬なのだが、この人は以前に読んだ
というアンソロジーに収録されていた「涙の匂い」という作品を読んで、いたく感心したのが出会いだった。この作品は東北の寒村に引っ越してきた女子中学生が青春の苦味を噛みしめ日々を送る姿を描いて秀逸だった。だが、それだけに留まらず普通なら描かれることのない『その後』の話があったというのが一番のサプライズ。これはとても良かった。
そこで本書なのだが、本書には8編の短編が収録されている。収録作は以下のとおり。
「サポートさん」
「みんなの後輩」
「同じ穴」
「一途な女」
「ワタルくん」
「総領の甚六」
「紳士協定」
「オブラート」
結論からいえば、本書の感想は少し物足りないものとなった。ただ、最初の2編はラストが少しヒネってあって、いってみればミステリ的なサプライズが用意されていたのがめっけもん。あとの作品は、微妙。