読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ロバート・ニュートン・ぺック「豚の死なない日」

イメージ 1

 衝撃的な本である。

 ひと昔前のアメリカ、ヴァ-モントの田舎。そこで慎ましく暮らすシェーカー教徒の農夫家族。

 彼らの禁欲的な生活が淡々と描かれる。作者自身であるロバート少年の目を通して。電気や電話もなく移動手段といえば馬車、日々の食物は畑や家畜や森からの自給自足である。ひとつ驚いたのが、森でしとめてきたリスの腹を裂いてで胃袋を取りだし、中に入っているナッツをオーブンで乾かしチョコレートケーキのトッピングにするくだり。

 全面的に肯定はできないが、ここには人間が地球と優しく接していく知恵がつまっている。多くを求めず、質素に暮らす。その暮らしの中で少年にとっては未知の出来事が次々と起こる。それは現実の非情さと残酷さを伴っている。

 冒頭に述べたように、ラストは衝撃的だ。淡々と語られるが、かなりズンッとこたえる。

読んでよかった。