雨あがりの道は、いつもより重たく感じられ
世界もみんなモノトーンに沈んでしまって
動きがない景色にとらわれたぼくは
咳を一つして
大きく伸びをした
湿っぽい空気は身体にまといつき
まるで水中で動いてるみたいに気だるい
フィッシュボーンにある大きな教会は
祭りの準備でいそがしい
司祭もエスペラント語でのスピーチ練習に余念がないみたいだ
ボーナン・ヴェスペーロン・ミーア・ノーモ・エスタス・ルカニ
(こんばんは、わたしの名前はルカニです)
同じところばかり練習している
年をとってるから、なかなか憶えられないらしい
今日は隣りのフインダムやエジーナからの訪問客が数多くやってくる
辻々にあるマイルストーンに導かれて
有象無象が数多くやってくる
雨はあがったけど、ぼくの心は涙に濡れる
亡くなった妹に思いを馳せると、吐きたくなってくる
ヴェルサント、おまえ、どうして死んじまったんだ
ゆっくり流れる時間は酷い
クラーチカの甘い旋律に誘われて
白陽蝶がゆっくりと目の前を飛んでいく
そしてアラビアに日が昇り
ぼくは途方に暮れる