読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ユリサントの世界

雨あがりの道は、いつもより重たく感じられ

世界もみんなモノトーンに沈んでしまって

動きがない景色にとらわれたぼくは

咳を一つして

大きく伸びをした

湿っぽい空気は身体にまといつき

まるで水中で動いてるみたいに気だるい

フィッシュボーンにある大きな教会は

祭りの準備でいそがしい

司祭もエスペラント語でのスピーチ練習に余念がないみたいだ

ボーナン・ヴェスペーロン・ミーア・ノーモ・エスタス・ルカニ
(こんばんは、わたしの名前はルカニです)

同じところばかり練習している

年をとってるから、なかなか憶えられないらしい

今日は隣りのフインダムやエジーナからの訪問客が数多くやってくる

辻々にあるマイルストーンに導かれて

有象無象が数多くやってくる

雨はあがったけど、ぼくの心は涙に濡れる

亡くなった妹に思いを馳せると、吐きたくなってくる

ヴェルサント、おまえ、どうして死んじまったんだ

ゆっくり流れる時間は酷い

クラーチカの甘い旋律に誘われて

白陽蝶がゆっくりと目の前を飛んでいく

そしてアラビアに日が昇り

ぼくは途方に暮れる