これは、夢のある話だ。久しぶりにわくわくしながら読んだ。
あの「総門谷」のようなぺダントリックなおもしろさとはまた違ったおもしろさだった。ギリシャ神話は昔から大好きで、どうして好きになったのかといえそれはひとえにレイ・ハリーハウゼンのおかげである。彼の映画で最初に観たのが「アルゴ探検隊の冒険」だったのだ。
いまではCGによってあらゆる映像が再現可能になったわけだが、ぼくの世代ならハリーハウゼンの作りだすダイナメーションの恩恵を受けてない人はいないんじゃないだろうか。
まさしく「アルゴ探検隊の冒険」は血湧き肉躍るダイナメーション映画の傑作だった。黄金の羊の毛皮を求めて冒険するイアソンの物語を題材にしたこの映画にはギリシャ神話のモンスターたちが多く登場し、小学生だったぼくの心を虜にした。羽をバタバタさせて襲いくるハーピー、ヘラクレスと戦うヒドラ、青銅の巨人タロス、そしてなんといっても圧巻なのが終盤の骸骨兵との戦いだった。
もう、心臓がノドからでるんじゃないかってくらい興奮したのをいまでも憶えてる。
それから、ギリシャ神話の世界に興味をもつようになった。
で、本書なのである。歴史のゆがみが生じたため、それを正すべく古代ギリシャに向かったのは沖田総司、アンネ・フランク、マタハリの三人。
この三人がギリシャの神々に会い真相を究明すべく奔走する。これがめっぽうおもしろい。
いつものごとく神話に関する新解釈などが披露されたりするのも楽しい。
続編は未読なのだが、これはほんとにおもしろかった。ワクワクが最初から最後まで続く本なんて、そうそうないではないか。「総門谷」のときも、とんでもない歴史上の人物たちが甦ってきて驚いたものだが、本書の三人もなんという取り合わせだろうか。どうやら続編は西遊記の世界が舞台になっているらしい。でも、なかなか読む勇気が出ない。「総門谷」にしても「竜の柩」にしても高橋作品の続編にはいつもだまされていたから、今回もそうなんじゃないかと思ってしまうのだ。
誰か読んだ人いないかなあ。