ヒストリアンとは「歴史家」のことを指す。
最初ぼくは「ダ・ヴィンチ・コード」のような歴史の謎+聖書ミステリー+オカルトみたいなものを期待していた。読みはじめた感触では、大いに期待をそそる雰囲気だった。
しかし、50ページくらいから壮大な歴史ミステリーは壮大な歴史ファンタジーホラーへと変貌してしまったのである。そうなのか、こういう話だったのか。
当初の期待から外れてしまったことにより、軌道修正もおぼつかずとにかく読み進めていったのだが、内容的には、かなり読ませると思った。馴染みの薄い東欧を舞台にしているところも新鮮でいい。
話の中心である歴史の謎も、かの人物に焦点をあわせることでこちらの興をついではなさない。スタートラインさえ間違わなければ、おおいに興奮させてくれること間違いなしなのである。
そう、本書は歴史ミステリーではない。ダン・ブラウンやセオドア・ローッザックを期待してはいけないのである。どちらかといえば、スティーブン・キングやピーター・ストラウヴ寄りの話なのだ。
未読の方も多いかと思われるので、多くは語らないでおこう。
好きか嫌いかと言われれば、ぼくは好きである。大いに堪能した。ルーマニア、ブルガリア、トルコという魔法に彩られた異郷の地を身近に感じた。不思議とこれらの国を舞台にした物語を読んだことがなかったので、それだけでもかなりの収穫だった。
最後にもう一度言おう。本書は、歴史ミステリーの意匠を借りたホラーである。未読の方は、それを踏まえてお読みください。