読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

アリス・シーボルド「ラブリー・ボーン」

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 本書の主人公のスージーは、十四歳という若さで理不尽に命を絶たれてしまいます。

 レイプされバラバラにされて最後まで彼女の遺体は肘の一部しか見つかっていませんでした。残された家族はみなそれぞれの方法でこの信じがたい我が身に起こった悲惨な事件をなんとか乗り越えようともがきます。スージーの死によって引き寄せられた様々な人たち、彼らと残された家族が絡まりあい、運命に引きづられながらも再生への道を進んでいきます。そしてそれを見守る天国のスージー

 苦しみがあれば、その先には幸せが、癒しが待っているのでしょうか?受難のあとには救いがあるのでしょうか?永遠の命題ともいえる答えの出ないこの問題を考えてしまいます。

 愛する人が死んでしまっても、いつも寄り添って見守っていてくれているというのが本当だったら、それはとても心癒される事実です。私は大丈夫だよ。こんなに幸せに暮らしているんだよ、と言われたらどれだけ慰められるでしょう。たとえ、それが理不尽な死をむかえていたとしても死者の魂が安らいでいるとわかったら、残された者にとってもやはりそれは再生への確かなステップになることでしょう。

 本書で描かれることの大半はこの残された人々の再生です。悲惨な事件を描いていても、読了して心温まるのはみんなが幸せへのステップを登っていってるからです。