読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

アレッサンドロ マンゾーニ 「 いいなづけ―17世紀ミラーノの物語 」

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たいへん楽しんで読みました。

結婚を誓い合う二人が、運命によって引き裂かれ、数々の苦難を乗り越えてめでたくゴールインするという、たったそれだけの話が、これほど読み手を惹きつけてやまない魅力ある物語になっていることに驚きます。何が魅力といって、マンゾーニのおおらかで時としてユーモアを忘れず、時として鬼気迫る冷徹な描写に心底酔いました。

人間の行動、思考の過程なんかもわかっていることなんだけどマンゾーニの的を得た言及に思わず膝を打ちたくなってしまいます。カトリック大国ゆえに、信心が大きく全体を覆っていて、そこらへんに疎いぼくは、あまり入り込めないところもありましたが、そんなことはこの大作を評価するうえでなんの影響もありません。とにかく、純粋に物語を楽しみました。勧善懲悪な物語は安手に思われるものですが、本書は違います。勧善懲悪でありながら、滋味にあふれ生気に満ちている。

是非お読み下さい。