読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

池井戸潤「オレたち花のバブル組」

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 ドラマが待ちきれなくて、続きも読んじゃいました。今回はまたまたスケールアップして巨額損失を出した老舗ホテルの再建がメインのストーリーとなる。なんとその額百二十億!こりゃ大変だ。本社の営業第二課次長となった半沢はこの誰がみても負け戦になる困難な再建を押し付けられるのだが、これがまたまた胸のすく展開をみせる。って、ここまでは書いてもいいよね?これがこのシリーズの醍醐味だもんね。そう、半沢君は、またまた見事にこの難問を解決するんです。それと同時に描かれるのが半沢と同期で前作で出向になってしまった近藤の孤軍奮闘の物語。こちらもあの何をやってもダメだった近藤が見事な立ち回りをみせてくれる。

 

 何回も書くがこのシリーズはほんとうにおもしろい。サラリーマンなら絶対に選ばない道を半沢は一人切り拓いてグングン突きすすんでゆく。上司にへつらわない毅然とした半沢の態度は胸がすくおもいで読んでいけるが、現実に目を戻せば、サラリーマンはやはり絶対服従が基本なのだ。だからそれをものともしない半沢の会社組織の理不尽さをはねつける言動は、読む者に勇気と夢を与えてくれる。かといって、半沢自身が清廉潔白な勧善懲悪のヒーローなのかといえばそうでもないところがまた絶妙の塩梅で描かれるからそこがまた魅力となっている。敵役を完全に懲らしめるかわりにかけひきをもちかけたり、自分に有利に働くように政治的な根回しをするところなどは、白より黒に近いイメージだ。『基本は性善説、やられたら倍返しだ』と言い放つ半沢のキャラクターは型破りながら、ダークヒーローの魅力もかね備えて輝いている。

 

 本筋に関係ないことながらあのドラマでも強烈な印象を残す金融庁検査官の黒崎駿一のおネエキャラは原作通りだった。ドラマ独自の設定なのかと思っていたので、少し驚いた。 
 さて、この半沢直樹シリーズもしかして島耕作みたいにどんどん歳をとって上にのぼりつめていくのかな?