読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

中村和恵「地上の飯 皿めぐり航海記」

食に関するエッセイだと思っていたのだが、それだけではなかった。著者の中村和恵さんは日本だけでなくモスクワ、メルボルン、ロンドンにも住んでいたことがあるそうで、その後も世界各国を周って様々な国の文化に触れてきたらしく、われわれの知らないめず…

長沢樹「消失グラデーション」

久しぶりにミステリを読んでいて完全にひっくり返されてしまった。はっきりいってこの衝撃は「十角館の殺人」以来だった。本書の323ページのある一行まできたとき、それまで活発に活動していたぼくの思考は完全にフリーズしてしまった。ほんと、真っ白に…

ご報告。

けっこう前に届いていたのだが、あの「ゴーストハント」が再刊された際の全巻購入特典プレゼントの報告なのである。いったい何が届いたのかというと、全巻がすっぽり収まる『専用BOX』と『特別冊子』の二点。 こんな感じね。 ↓ ぼくはまだ二巻目までしか…

ジョー・ヒル「ホーンズ 角」

まったく予想のつかない内容の本だったので、期待満々で読み始めた。開巻早々とにかく角が生えてくる。いきなり始まってしまう。そして、そのことによって主人公のまわりにあらたな現象が起こることになる。このへんの展開はとてもおもしろい。隠されていた…

トム・フランクリン「密猟者たち」

トム・フランクリンといえば、昨年ハヤカワポケットミステリから刊行された「ねじれた文字、ねじれた路」が話題になった作家なのだが、これは読みかけてノレず一旦手放した。「二流小説家」とあわせてまた読むことになるだろうが、本書はそのフランクリンの…

石蹴り

石を蹴る。ころころころ。軽く飛ばされ跳ねてゆく。ぼくは世間に顔向けできない身だ。この石のようにどこかへ飛んでゆきたい。自由を知りながらぼくは自由じゃない。そう、自由でありながら常に何かに束縛されている。それは社会であり法律であり家族であっ…

伊藤計劃「The Indifference Engine」

伊藤計劃の死後さまざまな本に彼のフィクションが収録されていたが、本書はそれらを一冊にまとめた彼の第一短編集だ。このように文庫本の形で刊行されてまことに喜ばしい。本書に収録されている作品は以下のとおり。 ・「女王陛下の所有物 On Her Majesty's …