読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ジョー・ヒル「ホーンズ 角」

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 まったく予想のつかない内容の本だったので、期待満々で読み始めた。開巻早々とにかく角が生えてくる。いきなり始まってしまう。そして、そのことによって主人公のまわりにあらたな現象が起こることになる。このへんの展開はとてもおもしろい。隠されていた醜悪な真実が暴かれるスリルに溢れている。

 

 しかし、第二章で話はいきなり十年ほど時間を遡る。少年時代の主人公と、それをとりまく仲間たち。青春の光と影。これはこれで面白い。かなり読ませる。危険な遊び、親友、そして恋。

 

 物語はそうやって自在に空間と時間を超越して構築されてゆく。いったい過去に何があったのか?どうして角が生えてきたのか?長い物語は従来の物語構築メソッドをまったく無視した形で進められてゆく。ラスト近くまで伏せられていてもよさそうな事実が早々と明かされたり、登場人物の性格が統一されていなかったり。リーダビリティはあるし先は気になるし、けっして退屈な作品ではない。しかし、読了してみれば、さほど残るものはないのだ。いわば本書はワンアイデアをふくらませて書かれた作品で、角が生えた男のイメージからすべてが発生しているように思えてならない。おそらく本書を完結に導くまでに作者はかなり苦労したのではないかと思うのである。だから本書は最初から最後まで一貫性が感じられず、散漫な印象が残るのみなのだ。

 

 ぼくは「20世紀の幽霊たち」を読んだとき、その素晴らしい才能に目を瞠った。この息子はあの偉大な父親より数倍短編小説を書くのが上手いと感じた。しかし、長編に関しては父親のほうに軍配があがるのである。はっきりいって足元にも及ばない。それでも、この700ページを超える長丁場を最後まで読ませるのも事実。今後も、この作家を見守っていきたい。

 

 最後に、本書の内容とはまったく関係ないのだが、読んでいて気になったことがあるので書いておく。
これは校正や編集に関係することだと思うのだが、本書の中に間違いの記述が四箇所ほどあった。それは

 

名前が入れ替わっていたり誤変換だったりするのだが、頻度的に多いな感じた。今後はこういうことはないようにお願いしたいものである。