読み始める前は、弱者としての女性が何者かに狙われ窮地に立たされ、しかしなんとか巻き返して敵に反撃していく・・・なんていうサスペンスの王道的な話なのかなと勝手に想像していたけど、その期待は快く裏切られることになる。でも、それが失望にならずけっこうおもしろく読めた。以下それぞれの作品の感想をば。
「シープメドウ・ストーリー」 ジャック・ケッチャム
巻頭のケッチャム作品は、とてもシンプルでおとなしい。女性が狙われるシチュエーションは登場するが、ちょっと変則的。物語もハッピーエンドな感じで、あのケッチャムが敢えてこういう話を書いてきたことに驚く。ここに登場する作家志望の男ストループ(プルーストのアナグラム)は、どうやら若かりし頃のケッチャムが反映されているらしい。このストループ物は他にも作品があって、一冊にまとめられているそうな。
「狙われた女」 リチャード・レイモン
この作品のみ、ぼくが最初期待していたとおりの王道サスペンス作品。ある日突然、主人公のシャロンが勤めているオフィスにショットガンを持った男がやってきて問答無用に撃ちまくる。いったいなぜ自分が狙われるのか?犯人の意図は最後までわからない。物語は決着を迎えるが、ちょっとぼくにもわからない部分が残った。これはどういうことなのかなあ。どうして、勃起していたのかなあ?生きていたのかなあ?う~ん、いくら考えてもわからない。
「われらが神の年2202年」 エドワード・リー
この人以前に「999 聖金曜日」というアンソロジー収録の「ICU」を読んでいるのだが、まったく憶えていませんでした。で、本作はどうなのかというと、これが超SF大作なのですよ。本アンソロジーの中でも群を抜く長さで、およそ250ページ。まあ、しっかりと書き込まれております。ここでもやはりいきなり女性主人公(名前もシャロン)がある男に襲われるところから物語は始まり、どんどん変な方向へ進んでいくのだが、設定がしっかり作り込まれていて読ませる。宇宙の辺境をゆく航宙艦が舞台なのだが、そこにクリスチャン連邦なるものが絡んできて、宗教の厳しい戒律を守り通してきた女性がまわりに影響されて徐々に自我に目覚めてゆく過程とその航宙艦の真の目的とは何なのか?が並行して描かれなかなかおもしろい。ラストもどうまとめるのかな?と思っていたら、なるほど、そうきましたかってな感じ。楽しめました。
というわけで、当初期待していたのとは違う感触だったけど、結果オーライって感じかな。
これ読んで読もうかなと思った方、でも描写的にはグロ注意ってところがそこかしこに散らばっておりますゆえ、お気をつけくださいまし。
これ読んで読もうかなと思った方、でも描写的にはグロ注意ってところがそこかしこに散らばっておりますゆえ、お気をつけくださいまし。