読書の愉楽

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三津田信三「首無の如き祟るもの」

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 三津田氏の作品は初めてである。デビュー当時から見知ってはいたので、どんな作風かはある程度予測はできた。ぼくの記憶に間違いがなければ、確かこの人講談社ノベルズでデビューしたんだよね?

 ホラー系だとはわかったけど、どうも食指が動かなかった。今回のシリーズの第一弾である「厭魅の如き憑くもの」が出たときも大方の評価は凡作どまりだったから、気にもとめてなかった。だがこの三作目にいたって、ブログ内での評価が軒並み高評価となった。これは気になる。というわけで、ぼくもおっとり刀で読み出したのである。

 もう、出だしからして完璧に構築されたこの世界観にノックアウトされてしまった。土着的な民間伝承と旧家をめぐる因習と因縁。まさしく横溝正史のあのオドロオドロしい世界を再現したかのような舞台設定がミステリマインドを激しく揺さぶる作品で、本格物としての完成度もかなりのハイレベルだ。本書の謎の素晴らしいところは、動機がまったくわからないところにある。もちろんどうやって犯行を成し得たのかという謎も重要なのだがラストの解明部分で頭の霧が一掃されるのは動機が解明したときなのである。

 それもこれもただ一つの行いに端を発しているというのだから、畏れ入る。

 まさしくラストの解明部分は圧巻で、探偵役の刀城言耶自身が挙げた三十七項目にもわたる謎や問題点が次々と解明されていく件は息つく間もないおもしろさ。久しぶりにミステリでのカタストロフィを味わった。ましてや二転三転するどんでん返しとくれば、これはもうお手上げというしかないではないか。ここで驚かない人はいないだろう。ぼくは二回アッ!と声をげてしまった。

 そして行きつく先は、ああ、これは言えない。まさか、こんなラストが待っていようとは・・・。

 この探偵役の刀城言耶って、そうなの?前二作読んでないから、まったく未知数なんだけど、これはいったいどういうことなの?これではまるであのカーの「○○○○」とおんなじラストではないか。

 う~ん、すごいことになってますよ、これは。こうなりゃ、前二作も読んでみようかな。ところで、最後に載っている『書斎の屍体』の目次にある東西登って西東登の間違いだよね?