この人のティーンズハートの『渋谷サイキックリサーチ』シリーズは怖いともっぱらの噂だったのだが
、気づいた時には書店から消え去っていて、その後古本屋を探してもとんと見かけたことがない。だか
ら一冊も読んだことがないのだが、番外編として「講談社X文庫ホワイトハート」から出た本書は、リ
アルタイムで読むことができた。もう10年ほどまえのことである。
読んでみて驚いた。こちらが思っていた以上に傑作だったのだ。
いわゆる幽霊屋敷ベースのホラーなのだが、ぼくがホラーを読むときにいつも注目している因縁が解明
されていく過程が、とてもサスペンスフルで怖かった。ところどころでかましてくれる小ワザも見逃せ
ないし、それがまたすごく効果的に配置されている。そのツボを押さえた技量に完全に感服した。
本書を読んで、小野不由美はホラーの分野でも本物なのだと確信した。
その後、彼女は「東亰異聞」、「屍鬼」と一般書でもホラーの傑作を書くことになる。
好みからいえば「屍鬼」の方に軍配があがる。あれは、傑作中の傑作だ。かのキングへのオマージュと
しても秀逸である。
話がそれた。
とにもかくにも本書は、怖いホラーである。少女向けライトノベルとして刊行されているが、これを女
子中、高生だけに読ませておくのはもったいない。「十二国記」シリーズのときもそう思ったが、本書
も然りだ。そういえば、最近小野さんの新作出てないなあ。また、長くて怖いホラーを書いてもらいた
いものだ。ぼくは鶴首して待っているのである。