読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」

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ライトノベルの中でも、すこぶる評判がいいので読んでみた。三十も後半のおっさんが、こんな可愛ら

しい表紙の本を買うのは少々勇気がいったし、多分店員の女の子もぼくのことを変態だと思ったのに違

いないが、気になって仕方がなかったのだ。

物語は鳥取の田舎町の中学校に転校生がやってくるとこから始まる。

転校生の名は海野藻屑。いつもペットボトルの水をグビグビ飲んでいる少し変わった女の子だ。自分の

ことを人魚の姫だと言い、いつも周囲を戸惑わす不思議ちゃんだ。

ところで、この物語の冒頭に新聞記事の抜粋が載っている。鳥取県 境港市蜷山の中腹で、少女のバラ

バラ遺体が発見されたという記事だ。

ここで読者は、避けることのできない結末が待っていることを知る。そう、開巻早々読者はあまりにも

惨たらしい結末を知ってしまうのだ。

ここで、おじさんであるぼくは少々身構えるのである。バラバラ死体なんて。それも十三歳の少女がそ

んな目に遭うなんて。ライトノベルにしては、なかなかハードな内容ではないか。

普段読んでるミステリでは、バラバラになろうが首が切られようがなんとも思わないのだが、中学が舞

台の学園物読んでてバラバラ死体が出てくると、やっぱり凄くおぞましく感じてしまう。

そこに流れる血が、すごく鮮明に見えてしまう。匂いまで伝わってきてしまう。そういう意味で本書は

すごくショッキングな内容なのだ。

しかし、物語の骨子としては目新しいものがない。虐待する親と、その親を慕う子ども。親子という逃

れられない血の絆が招く悲劇は、イヤというほど読んできた。だから、特別な感情を抱くこともなかっ

た。でも、これを中学生や高校生の子が読むと凄く心に残ってしまうんだろうなと思う。

ウチの子には、読んでもらいたいと思う。こういう辛いことも知ってもらいたいと思う。少女のイニシ

エーション的な内容もあわせもつ本書は、反面として心を強くする作用をもっていると思うから。

本書の中に興味深い問題が出ていたので、紹介したいと思う。

ある男が不慮の死を遂げた。男には妻と子があった。葬式のとき、男の同僚がやってきた。夫を亡くし

て肩を落とす女を慰めるうちにお互い親密な感情を抱くようになった。やがて、その女は我が子を殺し

た。さて、どうして女は子を殺したのか?

この問題の答えがわかる人は要注意らしい。答えが知りたい方は本書をお読みください。