いまさらながら、透明人間でございます。
この使い古された題材をセイント氏は、いかにして甦らせたのか?
これぞまさしくエンターテイメント。刊行された当時(およそ15年前です)は『十年に一度の傑作』なんていわれたものです。
話は簡単。透明人間の逃亡劇でございます。だが、そこはそれ、透明になってしまったことにより、主人公はとんでもない窮地に立たされます。
作者は、あらゆる問題に真正面から挑んでいきます。まず、衣食住の問題。透明になってしまった身体につける衣服は透明でなければならない。透明になってしまった身体に食べ物を取り込むとどうなってしまうのか?透明な身で誰の世話にもならず住む所があるのか?
秘密情報機関が、あらゆる手を使って執拗に追ってくるなか、主人!公はこれらの問題を克服して逃亡します。でもそれは生半可なことじゃないんです。だって考えてみてください。道を歩くにしたって、人にぶつからないように気をつけなければならないし、車はびゅんびゅん突っ込んでくるし、雨の日は外には出れないんですから。
さて、このかわいそうな主人公は、どうこの窮地を脱するのでしょうか?どうか自分の眼で確かめてください。
ほんと近年稀に見る傑作小説に仕上がっています。ぜひお試しください。