脛に傷もつ身のフィル・ハントは小さな牧場を経営するかたわら、麻薬の運び屋として生計をたてていた。子宝に恵まれることもなく妻と二人細々と暮らしている彼はもう五十四歳、やり直しのきかない人生に諦念を感じていた。しかし、彼はいままで一度も仕事をしくじったことはなかった。それがある日の荷物の受け渡しで若い保安官補のドレイクに発見され、命からがら逃亡することになる。
ここからハントの転落がはじまる。しくじった償いとして新たな仕事に向かうことになったのだが、それはハントを始末するためのミッションだったのだ。からくも窮地を脱したハントは逃亡する。築いてきたささやかな人生を犠牲にして、わずかな光明をめざして。追うのは、人体を切り刻むことをこの上ない悦びとする調理師グレイディとハントをこの窮地に追い込んだ保安官補のドレイク。そこに大元である麻薬の元締の冷血なヴェトナム人も絡んで、息つく間もない追跡劇が繰り広げられる。
460ページと、なかなかのボリュームなのだが一旦読み始めるとみるみるページが少なくなってゆくほどの読みやすさだった。各々の視点で次々と場面を転換し、興趣をつないでゆくのでどんどん読まされてしまうのだ。主人公であるハントもいい味出しているが、追う側の調理師グレイディのキャラクターが定番ながら、やはりおもしろい。血も涙もないとは、こういう男のことをいうのだろう。
しかし、読了して感じるのはおもしろい映画を観終わったような感覚だった。それがいけないというわけじゃないが、いたってシンプルでそこそこに派手な演出がある犯罪映画的なサスペンスと爽快感が後に残ったというわけ。軽く読みたいって人にオススメです。
ここからハントの転落がはじまる。しくじった償いとして新たな仕事に向かうことになったのだが、それはハントを始末するためのミッションだったのだ。からくも窮地を脱したハントは逃亡する。築いてきたささやかな人生を犠牲にして、わずかな光明をめざして。追うのは、人体を切り刻むことをこの上ない悦びとする調理師グレイディとハントをこの窮地に追い込んだ保安官補のドレイク。そこに大元である麻薬の元締の冷血なヴェトナム人も絡んで、息つく間もない追跡劇が繰り広げられる。
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しかし、読了して感じるのはおもしろい映画を観終わったような感覚だった。それがいけないというわけじゃないが、いたってシンプルでそこそこに派手な演出がある犯罪映画的なサスペンスと爽快感が後に残ったというわけ。軽く読みたいって人にオススメです。